さよなら尾崎くん
彼らはすでに死んでいるが、自分が死んだことに気付いていないこと。この世になにか名残があり、成仏出来ずに彷徨い歩いていること。死亡した原因は病気や怪我など様々であろうが、絶命した瞬間、そのままの姿であること。一般人には見えないが、僕のように霊視できる人間の存在に気付くと、何かを伝えるべく寄ってくる傾向があること、などだ。

親しみ慣れた通学路で、とてつもないことが起こっている。幽霊騒ぎが始まってすぐ、家族や友人たちには相談した。しかし自然と口をつぐむようになった。話を公にすると、誰しもが奇異な目で僕を見るようになったからだ。孤独感に苛まされたし、後ろ暗い人間にもなりかけた。それでも恵だけは僕のことをずっと信じていてくれた。おかげで、曲がらず大人の入り口にまで辿り着けた。

「恵、行こうか」

「うん」

ひと数少なかった通学路は、いつしか賑わっていた。恵と談笑を交わす傍ら、僕にしか見えない『公園を彷徨う人』を横目で流し見て、軽い足取りで駅に向かった。


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