さよなら尾崎くん
3、
それから数日後の放課後。
図書室で少しの時間を過ごし、気に入った本を二冊ほど抱えて帰宅するのがいつもの日課だ。人付き合いが苦手な僕は、部活動を選択しなかったので、一人で帰宅することが多い。晩秋も迫り、宵の明星が輝き始めたころ、遠くのバス停で、誰かが言い争っている場面に直面した。
「なんでお金を渡すんだ。もういい加減にしてくれよ!」
「神様のお告げなのよ。そうしないと罰が下るって」
「神なんていない!少しは自分の頭で考えたら?」
渦中の二人は、どうやら親子のようだ。憤りを抑えきれない息子が、母親を責めているように見える。少し気掛かりではあるが、触らぬ神に祟りなしとばかりに、通り過ぎようとするが、馴染みのある顔に気がつき脚を止めた。