さよなら尾崎くん
「尾崎君!」
「つ、月島……」
思わぬところで知り合いに会い、ばつが悪そうに視線を逸らす尾崎君に声も掛けられずにいると、母親らしき人が精気なく話す。
「快人、駄目なお母さんでごめんね。こんなことを言える立場ではないけど、貴方は私と違って強い人間になれる。苦しむ人の声を聞ける立派な大人になってね……」
話には応えない彼を気にかけたお母さんは、到着したバスに乗り込んで、そのまま消えてしまった。あとには僕と尾崎君が残された。気まずい雰囲気の中、かける言葉を探していたら、彼が先に口火を切った。
「月島、悪いが、少し話を聞いてくれないか?」
尾崎君の口調は、いつもの自信家の彼ではない。何かに縋るような悲しい目をしている。軽く相槌を打つと、近くの公園のベンチに案内された。風で揺れる落葉樹の葉を眺めながら頭を整理し、僕が先に声をかけた。