トップアイドルの恋 Season2〜想いを遂げるその日まで〜
この日の舞台挨拶は、上映前に行われた。
観客はまだ映画を観ていない状況で、藤堂監督、瞬、沙奈が壇上に姿を現す。

キャー!という興奮した声に混じって、「イヤー、瞬!」「ショック!」という声も聞こえてくる。

数時間前に結婚を発表したばかりだが、既に情報は知れ渡り、マスコミも前回の倍以上の人数が詰めかけていた。

「皆様、本日は映画『真実の光』公開初日の初回上映に、ようこそお越しくださいました」

司会者がいつもより声を張って進行していくが、カメラマンはひっきりなしに瞬を捉えてシャッターを切り、芸能レポーターも、隙あらば質問しようとマイクを手にタイミングをうかがっている。

「それでは、まずは藤堂監督からひと言お願い致します」
「はい。えー、皆様。本日はようこそお越しくださいました。って、聞いてる?」

思わず監督が突っ込むと、皆はようやく目を移して笑う。

「俺の話なんて誰も聞いちゃくれないとは思いますが、まずは皆様、映画の話をしましょう。その後たっぷり瞬に話をさせますから。ね?映画の話をした尺と同じだけ、瞬の尺も取りますよ」

すると場内は一気に静まり返り、監督に注目した。

「おー、さすがは瞬の効果。皆さん素晴らしい」

ようやく落ち着きを取り戻し、司会者の進行で舞台挨拶が進んでいく。

瞬は、映画にかけた熱意や撮影のエピソードなど、沙奈も見どころや関係者への感謝を述べて挨拶は終わった。

「我々がありったけのエネルギーと想いを注ぎ込んで作り上げた渾身の作品です。多くの方の心に届くことを願っております。本日はありがとうございました」

瞬の言葉で締め、3人は深々とお辞儀をした。
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