トップアイドルの恋 Season2〜想いを遂げるその日まで〜
「うーわ、なにあれ?色気ダダ漏れ。余裕ぶっこき。向かうところ敵なしのアイドル無双って感じ」
「よ、陽子さん?一体なんの話を…」
「おたくの旦那よ!みなぎる自信に溢れる輝き。ああ、もう、暑い!常夏か?ここは」

だ、旦那って…と、明日香は仰け反って後ずさる。

映画「真実の光」は大ヒット。
サザンクロスの主題歌「Truth」も常にランキング上位で、歌番組にも引っ張りだこだった。

今夜も生放送の番組に出演し、4人は相変わらずキレのあるパフォーマンスを見せていた。

スタジオの隅で見守りながら、陽子はしきりに感心している。

「人って幸せになるとあんなに輝くのね。いいなー。私もしようかな、結婚」
「え?陽子さん、結婚するんですか?!」
「んー、迷ってるんだ、実は。少し前にプロポーズされてね」

ええ?!と明日香は思わず大きな声を上げそうになる。

「プロポーズ?!だ、誰にされたんですか?」
「隣のうちの完ちゃん」
「完ちゃん?!って、昔、陽子さんが顔引っかかれた、あの完ちゃんですか?この傷のせいで嫁に行けなかったら、責任取ってもらってやる、って言ってた?」
「そう、その完三郎。サザンクロスのドームコンサートの後、しばらく実家に帰ってたら、たまたま向こうも帰って来てたのよ。で、お前まだ嫁に行ってないのか?仕方ないな、俺が責任取るかって」

ひゃー!と明日香は手で頬を押さえる。

「それで?陽子さんはなんて?」
「頭冷やして出直せって言ったの。そしたらこの間連絡が来て、頭冷えたからもう一回言うって。お前も頭冷えたら返事しろよって言われて、それ切り」

うひゃー!と明日香は身悶える。

「ステキ!完ちゃん、男前!」
「どこがよ?ニコリともしないで、捨て台詞みたいに言うのよ?」
「だからいいんですよ。不器用な日本男児って感じで。男に二言はない!俺は必ずお前を嫁にする!みたいな」

すると陽子の顔がみるみるうちに赤くなる。

「ん?どうしました?陽子さん」
「明日香、な、なんで知ってるの?」
「え?なにを?」
「だから、完三郎のセリフ!」
「ええ?!本当にそう言われたんですか?男に二言はないって?」
「そう。俺は必ずお前を嫁にするって」
「おおー!ミラクル!これはもう運命ですよ。ね?陽子さん」
「うん。なんかちょっと鳥肌立った。しちゃおっかな、結婚」
「うんうん。いっちゃいましょう!」
「はあ?もう、急に余裕ね、奥さんになると」
「それがまだ奥さんじゃないんですよー」
「あら、婚姻届まだ出してないの?」
「はい。情報漏洩のリスクを考えると、婚姻届と転居届を同時に出したいって富田さんが。なので、結婚も新居が決まってからになります」
「そうなんだ!じゃあ、私が先に出しちゃおっかなー。ぐふふ」
「え?ってことは、やっぱり結婚するんですか?」
「んー、どうしよっかなー」
「気になるー。教えてくださいよー」

二人はスタジオの隅で押し問答を繰り広げていた。
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