トップアイドルの恋 Season2〜想いを遂げるその日まで〜
11月22日。

ついに瞬と明日香の引っ越しの日がやって来た。

区役所に提出されるのは、転居届だけではなくもちろん婚姻届も一緒。

この日、10年間の想いを結んだ二人は、ようやく夫婦となった。

「お帰りなさい!」
「ただいま、明日香」

ひと足早く新居に帰っていた明日香が、玄関で瞬を出迎える。

富田が、新居選びから引っ越し作業まで全てを請け負ってくれた為、明日香も瞬も部屋に入るのは今日が初めてだった。

「へえ、いい部屋だな」

足を踏み入れたリビングを見渡して、瞬が言う。

広々としたリビングダイニングは、落ち着いた色合いのブラウンの家具でまとめられ、窓からは綺麗な夜景が見えた。

「でしょ?富田さんやアシスタントマネージャーの村上さん達が、家具と家電の手配も全部済ませてくれてたの。もうモデルルームに引っ越してきたみたいよ」

そう言って明日香は瞬に部屋を案内して回る。

「ここがバスルームで、ここが瞬くんのお部屋。私物は段ボールに入ったままだから、時間見つけて整理してね」
「分かった。寝室は?」
「えっとね、こっち」

明日香がドアを開けると、壁一面のクローゼットと大きなキングサイズベッドが目に入った。

「おお、いいな大きくて」
「うん。これだけ大きいと、瞬くんの衣装もたくさん入るね」
「そっちじゃなくて、こっち」

瞬はベッドに近づくと、ゴロンと横になった。

「はー、寝心地最高!明日香も寝転んでみた?」
「ううん、まだ」
「じゃあおいでよ」

そう言って瞬は明日香を手招きする。

「あ、そうですね。それはまた後ほど…」

後ずさろうとすると、瞬が上半身を起こして腕を伸ばし、明日香の手を引いた。

バランスを崩した明日香が、わっ!とよろける。

気がつくと瞬の胸にギュッと抱きしめられていた。

「明日香。俺の10年間の夢だったんだ。こうやって明日香を抱きしめるのが」

耳元で切なげにささやかれる声に、明日香は言葉もなくドキドキする。

「良かった。明日香が今こうして俺の腕の中にいてくれて。幸せで胸が震える。ヤバ、本当に震えてきた」

明日香は、ふふっと笑って瞬を見上げた。

「瞬くんも緊張したりするの?」
「ああ。どんなステージに立つよりも、明日香を前にする方が緊張する」
「ええー?そんなので大丈夫?」
「おっ、なんだ。明日香は余裕なんだな」
「瞬くんよりはね」
「むーっ、なんか悔しい」

そう言うと瞬は明日香をベッドに押し倒した。

「わっ、ちょっと、瞬くん!」

声を上げた明日香は、すぐ目の前に顔を寄せた瞬にじっと見つめられ、思わず身を固くする。

「明日香。10年間本当にありがとう。俺は絶対にこの10年の重みを忘れない。そしてこれからは心置きなく、本気で明日香を幸せにしてやる。覚悟してて」

瞬が見せる男の色気に、明日香はこれ以上ないほど胸がドキドキした。

「あ、あの…。お手柔らかに、お願いします」

消え入るような声で言うと、瞬はクスッと笑った。

「そうだな。少しずつ、10年間を埋めていこう」
「うん」

そして瞬は、優しく明日香に口づけた。

二人の幸せな生活は、まだ始まったばかり…。
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