トップアイドルの恋 Season2〜想いを遂げるその日まで〜
「富田さん、ちょっといいですか?」
直哉達がぐったりしながらクールダウンを始めると、陽子は明日香を連れて、ドアの近くでタブレットを操作していた富田に声をかけた。
「お疲れ様です。どうですか?衣装デザインのアイデアは」
「全然ダメです」
「…は?」
陽子の言葉に富田は目をしばたかせる。
「珍しいですね、いつも強気な陽子さんがそんなにキッパリと」
「だって、情報が少なすぎます。この曲は何に使われるんですか?それが分からないとイメージが固まりません」
それを聞いて、富田は少し視線を逸らして考え込む。
「情報のリリースは今月末なんですけど、それだと遅いですか?」
「いつもなら大丈夫ですが、この曲は今まで通りとはいきませんよね?振りもカメラワークも複雑ですし、小道具まで使います。衣装もいつもと同じにはいきません」
すると富田は決意したように頷いた。
「分かりました。詳細をお伝えします。ただ、くれぐれも情報の漏洩にはご注意ください。他言無用でお願いします」
陽子も明日香も大きく頷く。
「実は3ヶ月後に瞬の主演映画がクランクインします。この新曲は、その映画の主題歌になります」
えっ!と声を出しそうになり、明日香は慌てて言葉を飲み込む。
(瞬くんが、映画の主演?!凄い!)
ひょっとして、トレーニングもその為なのだろうかと思っていると、富田が言葉を続けた。
「役柄は警察官です。監督はあの藤堂さんなので、単なるアクション映画ではなく、人間ドラマも織り交ぜたヒューマンサスペンス映画。なので新曲は、カッコイイながらも複雑に移りゆく心情や苦悩、そして真実はどこにあるのかという思いを、謎めいた小道具を使って表現しています」
「なるほど…」
陽子と明日香は、同時に呟いて納得した。
そしてこれまた同時に、サラサラとスケッチブックに書き込んでいく。
「今お伝え出来るのはここまでです。あ、でも…」
「ん?何ですか?」
「いや、これは改めて事務所を通してお伝えさせてください。それでは」
そう言うと、富田はそそくさと部屋を出て行った。
「なーに?言いかけて止めるって、私一番気になるパターンなのよね!この秘密主義者!」
「よ、陽子さん。富田さん、ちゃんと教えてくださったじゃないですか。ね?」
「まあね。でもさ、この情報もなくデザイン考えろって思ってたんでしょ?それもどうなの?デザイナーをなめてもらっちゃ困るわ」
「なめてませんって!紗季さんの旦那様ですよ?ほら、デザイン考えましょ!富田さんのおかげでイメージ湧きましたよね」
まだブツブツ小言を言いたそうな陽子の背中を押して、明日香はレッスンルームの外へと促す。
最後にチラリと瞬を振り返った。
うつむいてストレッチをしている瞬の横顔に、明日香はふっと頬を緩める。
(瞬くん、おめでとう!頑張ってね)
心の中で呟くと、陽子と一緒に部屋をあとにした。
直哉達がぐったりしながらクールダウンを始めると、陽子は明日香を連れて、ドアの近くでタブレットを操作していた富田に声をかけた。
「お疲れ様です。どうですか?衣装デザインのアイデアは」
「全然ダメです」
「…は?」
陽子の言葉に富田は目をしばたかせる。
「珍しいですね、いつも強気な陽子さんがそんなにキッパリと」
「だって、情報が少なすぎます。この曲は何に使われるんですか?それが分からないとイメージが固まりません」
それを聞いて、富田は少し視線を逸らして考え込む。
「情報のリリースは今月末なんですけど、それだと遅いですか?」
「いつもなら大丈夫ですが、この曲は今まで通りとはいきませんよね?振りもカメラワークも複雑ですし、小道具まで使います。衣装もいつもと同じにはいきません」
すると富田は決意したように頷いた。
「分かりました。詳細をお伝えします。ただ、くれぐれも情報の漏洩にはご注意ください。他言無用でお願いします」
陽子も明日香も大きく頷く。
「実は3ヶ月後に瞬の主演映画がクランクインします。この新曲は、その映画の主題歌になります」
えっ!と声を出しそうになり、明日香は慌てて言葉を飲み込む。
(瞬くんが、映画の主演?!凄い!)
ひょっとして、トレーニングもその為なのだろうかと思っていると、富田が言葉を続けた。
「役柄は警察官です。監督はあの藤堂さんなので、単なるアクション映画ではなく、人間ドラマも織り交ぜたヒューマンサスペンス映画。なので新曲は、カッコイイながらも複雑に移りゆく心情や苦悩、そして真実はどこにあるのかという思いを、謎めいた小道具を使って表現しています」
「なるほど…」
陽子と明日香は、同時に呟いて納得した。
そしてこれまた同時に、サラサラとスケッチブックに書き込んでいく。
「今お伝え出来るのはここまでです。あ、でも…」
「ん?何ですか?」
「いや、これは改めて事務所を通してお伝えさせてください。それでは」
そう言うと、富田はそそくさと部屋を出て行った。
「なーに?言いかけて止めるって、私一番気になるパターンなのよね!この秘密主義者!」
「よ、陽子さん。富田さん、ちゃんと教えてくださったじゃないですか。ね?」
「まあね。でもさ、この情報もなくデザイン考えろって思ってたんでしょ?それもどうなの?デザイナーをなめてもらっちゃ困るわ」
「なめてませんって!紗季さんの旦那様ですよ?ほら、デザイン考えましょ!富田さんのおかげでイメージ湧きましたよね」
まだブツブツ小言を言いたそうな陽子の背中を押して、明日香はレッスンルームの外へと促す。
最後にチラリと瞬を振り返った。
うつむいてストレッチをしている瞬の横顔に、明日香はふっと頬を緩める。
(瞬くん、おめでとう!頑張ってね)
心の中で呟くと、陽子と一緒に部屋をあとにした。