トップアイドルの恋 Season2〜想いを遂げるその日まで〜

第七章 思惑と経験値

その後、週刊誌の騒動はあっけなく落ち着き、メンバーの自宅が張り込まれることもなく平穏な日々を取り戻した。

明日香も正式に仕事の依頼を引き受けると紗季達に伝え、映画についての情報もリリースされる。

「それではこれより、映画『真実の光』第一回スタッフミーティングを始めます」

この日、広い会議室に集められたスタッフは、緊張気味に資料に目を通しながら耳を傾けていた。

クランクインよりも前に準備を始めなければならない為、役者を除いた全てのスタッフが、顔合わせも兼ねて集合していた。

まずは藤堂監督が挨拶する。

「えー、監督の藤堂です。この作品は原作もなければ実話でもない。脚本も未完成。つまり、話が台本通りに進むとは限らない。演技は生き物だ。撮影の流れに合わせて臨機応変に対応して欲しい。みんなで良い物を作り上げていこう。よろしくお願いします」

短いながらも説得力のある言葉に、その場の雰囲気が一気に締まる。

(さすがは名監督と言われるだけあるな。並々ならぬ熱意が伝わってくる。瞬くん、こんな凄い作品の主演を務めるんだ)

明日香は、自分では想像もつかないほどのプレッシャーを瞬が感じているのではないかと思い、机の下でギュッと両手を握りしめた。

(なんとしても成功させなきゃ。私も精一杯やってみせる)