トップアイドルの恋 Season2〜想いを遂げるその日まで〜
カーテンの中で着替える瞬を待つ間、明日香は何度も必死に涙を拭っていた。

撮影が終わっても、明日香の涙は止まらない。

なんとかごまかしながら控え室まで来たが、瞬がカーテンの向こうに消えた途端にまたとめどなく溢れてくる。

油断すると嗚咽までもらしそうになり、明日香は懸命に堪えていた。

やがてシャッとカーテンが開いて瞬が姿を現す。

「お疲れ様でした!」

明るく声をかけて、衣装を受け取ろうと手を伸ばす。

「お疲れ様」

そう言って明日香に衣装を差し出した瞬は、明日香が受け取っても手を離さない。
どうしたのかと思っていると、ふいに瞬が、明日香?と呼んだ。

「え?」

顔を上げた途端、両目に溜まっていた涙がこぼれ落ちる。

「明日香、泣いてる?」

そう聞かれた途端、明日香は一気に声を上げて泣き始めた。

「うわーん!瞬くん!」
「わ、何だよ。急に」

堰を切ったように泣き始めた明日香に、瞬は驚いて顔を覗き込む。

「ひっどい顔だな。子どもかよ?」
「だって、だって、瞬くん…。わーん、瞬くんー!」
「泣き方まで子どもだな。外まで聞こえるぞ?」
「うぐ、ううう…」

必死で声を抑えようとすると、瞬が明日香をギュッと胸に抱きしめた。

「いいよ、思い切り泣いて」
「う、う、うえーん。ひっく」

しゃくり上げる明日香に笑いながら、瞬は明日香の頭を抱き寄せる。

「明日香。俺さ、明日香の声が聞こえたんだ」
「…え?」
「あの時の芝居、何も指示がなくフリーだったんだ。俺は本当は仇を取るつもりだった。相手を殺して自分も死ぬつもりだった。でも、急に明日香の声が頭の中で響いたんだ。ダメ!って」

明日香は顔を上げて瞬を見つめた。

瞬は優しく笑って明日香の頬に右手を添える。

「明日香ならそんなことは望んでないだろうなって思った。俺、明日香が好きでいてくれる俺でいたい。明日香に惚れられる男になりたいんだ」

明日香の目から、また涙が溢れ出す。

「そんなのとっくに惚れてるよ!私、瞬くんが大好きなんだから!」
「良かった。俺も明日香が大好きだ」
「うわーん、良かった、本当に良かったよー。瞬くんがあの時踏みとどまってくれて、本当に良かったー」
「ははっ!お前、感情移入しすぎだろ?ちょっと、鼻水つけるな!」
「だって、止まらないんだもんー」
「俺のシャツで拭くな!」
「誰のせいでこうなったのよー!」

わんわん泣き続ける明日香を、瞬はいつまでも優しく抱きしめていた。
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