トップアイドルの恋 Season2〜想いを遂げるその日まで〜
コンコンとノックの音がして、アシスタントマネージャーの村上と話していた瞬は顔を上げる。
「はい、どうぞ」
「失礼します」
お辞儀をして入って来た女性に、瞬は首を傾げた。
(あれ?高見さんかと思ったけど違うな)
「おはようございます。今日の衣装はこちらです」
そう言って、カバー付きのハンガーをラックに掛ける後ろ姿を、瞬はパチパチと瞬きしながら見つめる。
(衣装?衣装って、え、まさか!)
「明日香?!」
「え、なに?」
大声で呼ばれて明日香が驚いたように振り返る。
「びっくりした。急にどうしたの?」
「びっくりしたのはこっちだ!なんでそんな格好してんだ?」
「ああ。これは、明菜ちゃんと沙奈さんが、次回のスタイリングの参考にしたいからって。まあ、ちょっとした実験台みたいな」
明日香の説明が頭に入ってこない。
ふわっと髪をゆるくまとめ、水色の軽い素材のワンピースをまとった明日香は、いつもの明日香とは別人だった。
ぱっちりとした目元に艶やかな唇、頬はほんのりチークでピンクに染められ、見ているだけで瞬は胸がドキドキした。
「えっと、衣装は2種類用意してあります。沙奈さんの今日の衣装はオレンジなので、どちらかというと、この明るめのスーツの方が横に並んだ時に合うかなと…。ん?瞬くん、聞いてる?」
「あ、聞いてなかった」
「ええ?どうしたの?いつもの瞬くんらしくないね」
「それはこっちのセリフだ」
「私は普通にしゃべってるよ?とにかく着替えてみてくれる?チェックしたいから」
「あ、うん。分かった」
ギクシャクした動きで明日香から衣装を受け取り、カーテンの中で着替える。
「どう?サイズは大丈夫?」
「ああ、大丈夫」
カーテンを開けると、明日香が近づいてきて衣装を整えていく。
「肩周りきつくない?舞台挨拶って観客席に向かって手を振ったりするでしょ?ちょっと腕上げてみて」
両腕を上げると、明日香が笑い出す。
「バンザイしなくてもいいから!あ、なに?藤堂監督なら、万歳三唱とかするかもってこと?」
首を傾げて見上げてくる明日香に、瞬は思わず真っ赤になる。
「瞬くん、もしかして緊張してる?」
「う、うん」
「そうなんだ!そっか、主演映画の試写会だもんね。でもあの映画なら絶対に大丈夫!私が保証する」
そう言ってから、「私に保証されても…って感じ?」と笑いかけてくる。
瞬は何も言えずに立ち尽くしていた。
「え…、こんなに緊張してる瞬くん初めて見る。ごめんね、軽口叩いて」
明日香は途端に真顔になり、無言のまま真剣にネクタイを選び始めた。
何本か交互に瞬の首元に当ててから、小さく頷いて水色のネクタイを手にすると、瞬の首に腕を回して結んでいく。
じっと身を固くしてされるがままになっていた瞬は、ちらっと視線を落として明日香を見た。
くるんとカールしたまつ毛の下の大きな瞳、みずみずしく柔らかそうなピンクの唇…
知らず知らずのうちに吸い寄せられそうになり、瞬は思わず目をつぶって首を振る。
「あ、ごめん。苦しかった?」
「いや、大丈夫」
「そう?はい、これでOK。あとはカフスボタンと、ネクタイピンね。ポケットチーフは何色がいいかな?」
「なんでも、大丈夫、です」
すると明日香は、うるうると潤んだ瞳で瞬を見つめた。
「瞬くん」
「な、なに?」
「あの、私なんかがこんなこと言うべきじゃないかもしれないけど」
「…え?」
何か重大なことを言われそうな気がして、瞬はゴクリと生唾を飲み込む。
明日香はそんな瞬の両手をギュッと握りしめた。
「瞬くんなら絶対に大丈夫。緊張したら、みんなじゃがいもだと思ってね」
「…は?」
間抜けな声を出す瞬をよそに、明日香はまた真剣に衣裳を整え始めた。
「はい、どうぞ」
「失礼します」
お辞儀をして入って来た女性に、瞬は首を傾げた。
(あれ?高見さんかと思ったけど違うな)
「おはようございます。今日の衣装はこちらです」
そう言って、カバー付きのハンガーをラックに掛ける後ろ姿を、瞬はパチパチと瞬きしながら見つめる。
(衣装?衣装って、え、まさか!)
「明日香?!」
「え、なに?」
大声で呼ばれて明日香が驚いたように振り返る。
「びっくりした。急にどうしたの?」
「びっくりしたのはこっちだ!なんでそんな格好してんだ?」
「ああ。これは、明菜ちゃんと沙奈さんが、次回のスタイリングの参考にしたいからって。まあ、ちょっとした実験台みたいな」
明日香の説明が頭に入ってこない。
ふわっと髪をゆるくまとめ、水色の軽い素材のワンピースをまとった明日香は、いつもの明日香とは別人だった。
ぱっちりとした目元に艶やかな唇、頬はほんのりチークでピンクに染められ、見ているだけで瞬は胸がドキドキした。
「えっと、衣装は2種類用意してあります。沙奈さんの今日の衣装はオレンジなので、どちらかというと、この明るめのスーツの方が横に並んだ時に合うかなと…。ん?瞬くん、聞いてる?」
「あ、聞いてなかった」
「ええ?どうしたの?いつもの瞬くんらしくないね」
「それはこっちのセリフだ」
「私は普通にしゃべってるよ?とにかく着替えてみてくれる?チェックしたいから」
「あ、うん。分かった」
ギクシャクした動きで明日香から衣装を受け取り、カーテンの中で着替える。
「どう?サイズは大丈夫?」
「ああ、大丈夫」
カーテンを開けると、明日香が近づいてきて衣装を整えていく。
「肩周りきつくない?舞台挨拶って観客席に向かって手を振ったりするでしょ?ちょっと腕上げてみて」
両腕を上げると、明日香が笑い出す。
「バンザイしなくてもいいから!あ、なに?藤堂監督なら、万歳三唱とかするかもってこと?」
首を傾げて見上げてくる明日香に、瞬は思わず真っ赤になる。
「瞬くん、もしかして緊張してる?」
「う、うん」
「そうなんだ!そっか、主演映画の試写会だもんね。でもあの映画なら絶対に大丈夫!私が保証する」
そう言ってから、「私に保証されても…って感じ?」と笑いかけてくる。
瞬は何も言えずに立ち尽くしていた。
「え…、こんなに緊張してる瞬くん初めて見る。ごめんね、軽口叩いて」
明日香は途端に真顔になり、無言のまま真剣にネクタイを選び始めた。
何本か交互に瞬の首元に当ててから、小さく頷いて水色のネクタイを手にすると、瞬の首に腕を回して結んでいく。
じっと身を固くしてされるがままになっていた瞬は、ちらっと視線を落として明日香を見た。
くるんとカールしたまつ毛の下の大きな瞳、みずみずしく柔らかそうなピンクの唇…
知らず知らずのうちに吸い寄せられそうになり、瞬は思わず目をつぶって首を振る。
「あ、ごめん。苦しかった?」
「いや、大丈夫」
「そう?はい、これでOK。あとはカフスボタンと、ネクタイピンね。ポケットチーフは何色がいいかな?」
「なんでも、大丈夫、です」
すると明日香は、うるうると潤んだ瞳で瞬を見つめた。
「瞬くん」
「な、なに?」
「あの、私なんかがこんなこと言うべきじゃないかもしれないけど」
「…え?」
何か重大なことを言われそうな気がして、瞬はゴクリと生唾を飲み込む。
明日香はそんな瞬の両手をギュッと握りしめた。
「瞬くんなら絶対に大丈夫。緊張したら、みんなじゃがいもだと思ってね」
「…は?」
間抜けな声を出す瞬をよそに、明日香はまた真剣に衣裳を整え始めた。