君に出逢える私になるまで
茶道の練習だけでは私の1日は終わらない。次は学校に行かなければならない。行かなければならない、というのは、学校が嫌いだという意味ではない。注目されるのが嫌なのだ。
 畳んだ着物を掛けて、窓から中庭を見下ろすと、一台のリムジンが停まっているのが見えた。私は今からあれに乗って学校に行く。しかも、降ろされるのは大学の目の前だ。当然、毎日のことながら沢山の人に見られる。運転手には、「大学の少し手前で降ろして」と頼んだのだが、父からの命令なのでダメだと言われた。
 大学入学と同時に某大企業の娘だという事実は学校中で周知のものとなり、高校時代までと同様に、今では毎朝通学するだけでヒソヒソと噂をされる。何をするにも遠巻きに見られ、友達は一人もいない。
 でも友達がいないことが問題じゃない。自分に話しかけてくる人が誰もいない、話しかけてもどこかよそよそしい現実に傷ついて、立ち直れないことが苦しいんだ。
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