結婚前夜に殺されて人生8回目、今世は王太子の執着溺愛ルートに入りました!?~没落回避したいドン底令嬢が最愛妃になるまで~
ここから始める
『私と結婚していただけませんか!?』
翡翠色のまんまるな目に俺を映し、控えめで桜色の唇が俺にそう告げた。
――これは夢か?
瞬時に理解することができず、本気でそう思った。しかし、嬉しいことに現実だったらしい。
彼女――エルザからの求婚を断る理由など世界中のどこを探したって見当たらない。俺はその場でエルザとの結婚を決め、話は着々と進んでいった。
あのエルザが俺の妻になる。
幼い頃、神と精霊の庭で暖かな春の柔らかな風と共に訪れた俺の初恋は……十年の時を超え、なんの前触れもなく叶えられた。
『なぁベティーナ、俺はエルザと結婚するんだよな?』
『はいそうです。ノア様はエルザ様と結婚いたします』
『……ベティーナ、俺はエルザと結婚を?』
『結婚いたします』
『ベティーナ』
『いい加減にしてもらえますか?』
エルザと結婚するという事実を確認するために、俺は百回以上、専属侍女のベティーナに確認をした。この時の俺は、かつてないほど舞い上がっていた。
俺が結婚どころか婚約者すら決めないことにずっと焦っていた父上は、エルザとの結婚話をあっさりと認めてくれた。正直、次の日にでも結婚の儀をしてしまいたかったが、さすがに準備期間がなさすぎると周囲にとめられてしまい、二週間後となった。それでも、かなり急いだほうだ。
エルザが王宮へ来るまでは、山積みになった執務をこなしながらエルザとの生活を妄想しては口元を緩ませる日々。
まさかこんな奇跡が起こるとは、在学中思ってもみなかった。いいや、奇跡とは呼びたくない。俺とエルザが結ばれることは運命――必然だったのだ。
俺は幼い頃エルザに衝撃的なひとめぼれをしてから、ずっと彼女を想い続けていた。本当に好きで好きでたまらなかった。会えないぶん、想いは膨らむばかりだった。
そして十六歳の頃、ローズリンド王立学園で彼女と再会した。
以前よりも大人っぽく、美しくなったエルザを見て、俺は二度目の恋に落ちる。だが、あまりにエルザを好きすぎるが故に、彼女にだけうまく接することができない。直視もできず、陰でひっそりとエルザを見つめるだけ。そんな俺の視線に気づかれた時は、すぐさま視線を逸らした。本当は、笑いかけたかったのに。
どうでもいい令嬢たちとは、いくらでも無駄な話を続けられる。それは俺にとって単純作業と同じもので、ただ彼女たちが話していることに笑顔で頷いていればいいだけだ。
だが、相手がエルザとなるとそうもいかない。エルザが近くにいるだけで心臓は破裂しそうなほど脈打ち、自分が自分でいられなくなる。
俺はエルザを意識するあまり、逆にエルザから距離を置くようになってしまった。なにをしているんだと自己嫌悪に陥りつつも、どうしてもうまく接することができない。ダサい俺をエルザに見られて嫌われることが、なによりも怖かったからだ。
結局、なんの進展もないまま学園を卒業することになった俺は死ぬほど後悔した。これからは、毎日エルザと会うことはない。こうなったら、卒業後にあるパーティーでなんとかエルザと会話するしか手段はない。
そんななか迎えたパーティー当日。
ドレスアップしたエルザを見るなり、早速俺はあまりの眩しさに目をやられてしまった。話しかけようとしても、緊張して声がうまく出てこない。見かねたベティーナに一度裏へ連れて行かれ、俺としたことが侍女に叱咤される始末だ。
なんとか鼓動を落ち着かせまた会場へ戻ると――なんということだろう。エルザのほうが、俺に声をかけてくれた。
嬉しくてにやけそうになるのを必死に抑え、俺はやっと、エルザとふたりで話ができた。そしてそこで、エルザは俺に突然求婚してきたのだ。
だが、俺には突然とは思わなかった。彼女もまた、俺をずっと想っていたのだとわかったから。
エルザとの間に、言葉も、不安もいらなかった。俺たちは強い想いで繋がっているのだから。そんな俺たちなら、この先もっと幸せなことがたくさん待ち受けているに違いない。
――そう、思っていたのに。
翡翠色のまんまるな目に俺を映し、控えめで桜色の唇が俺にそう告げた。
――これは夢か?
瞬時に理解することができず、本気でそう思った。しかし、嬉しいことに現実だったらしい。
彼女――エルザからの求婚を断る理由など世界中のどこを探したって見当たらない。俺はその場でエルザとの結婚を決め、話は着々と進んでいった。
あのエルザが俺の妻になる。
幼い頃、神と精霊の庭で暖かな春の柔らかな風と共に訪れた俺の初恋は……十年の時を超え、なんの前触れもなく叶えられた。
『なぁベティーナ、俺はエルザと結婚するんだよな?』
『はいそうです。ノア様はエルザ様と結婚いたします』
『……ベティーナ、俺はエルザと結婚を?』
『結婚いたします』
『ベティーナ』
『いい加減にしてもらえますか?』
エルザと結婚するという事実を確認するために、俺は百回以上、専属侍女のベティーナに確認をした。この時の俺は、かつてないほど舞い上がっていた。
俺が結婚どころか婚約者すら決めないことにずっと焦っていた父上は、エルザとの結婚話をあっさりと認めてくれた。正直、次の日にでも結婚の儀をしてしまいたかったが、さすがに準備期間がなさすぎると周囲にとめられてしまい、二週間後となった。それでも、かなり急いだほうだ。
エルザが王宮へ来るまでは、山積みになった執務をこなしながらエルザとの生活を妄想しては口元を緩ませる日々。
まさかこんな奇跡が起こるとは、在学中思ってもみなかった。いいや、奇跡とは呼びたくない。俺とエルザが結ばれることは運命――必然だったのだ。
俺は幼い頃エルザに衝撃的なひとめぼれをしてから、ずっと彼女を想い続けていた。本当に好きで好きでたまらなかった。会えないぶん、想いは膨らむばかりだった。
そして十六歳の頃、ローズリンド王立学園で彼女と再会した。
以前よりも大人っぽく、美しくなったエルザを見て、俺は二度目の恋に落ちる。だが、あまりにエルザを好きすぎるが故に、彼女にだけうまく接することができない。直視もできず、陰でひっそりとエルザを見つめるだけ。そんな俺の視線に気づかれた時は、すぐさま視線を逸らした。本当は、笑いかけたかったのに。
どうでもいい令嬢たちとは、いくらでも無駄な話を続けられる。それは俺にとって単純作業と同じもので、ただ彼女たちが話していることに笑顔で頷いていればいいだけだ。
だが、相手がエルザとなるとそうもいかない。エルザが近くにいるだけで心臓は破裂しそうなほど脈打ち、自分が自分でいられなくなる。
俺はエルザを意識するあまり、逆にエルザから距離を置くようになってしまった。なにをしているんだと自己嫌悪に陥りつつも、どうしてもうまく接することができない。ダサい俺をエルザに見られて嫌われることが、なによりも怖かったからだ。
結局、なんの進展もないまま学園を卒業することになった俺は死ぬほど後悔した。これからは、毎日エルザと会うことはない。こうなったら、卒業後にあるパーティーでなんとかエルザと会話するしか手段はない。
そんななか迎えたパーティー当日。
ドレスアップしたエルザを見るなり、早速俺はあまりの眩しさに目をやられてしまった。話しかけようとしても、緊張して声がうまく出てこない。見かねたベティーナに一度裏へ連れて行かれ、俺としたことが侍女に叱咤される始末だ。
なんとか鼓動を落ち着かせまた会場へ戻ると――なんということだろう。エルザのほうが、俺に声をかけてくれた。
嬉しくてにやけそうになるのを必死に抑え、俺はやっと、エルザとふたりで話ができた。そしてそこで、エルザは俺に突然求婚してきたのだ。
だが、俺には突然とは思わなかった。彼女もまた、俺をずっと想っていたのだとわかったから。
エルザとの間に、言葉も、不安もいらなかった。俺たちは強い想いで繋がっているのだから。そんな俺たちなら、この先もっと幸せなことがたくさん待ち受けているに違いない。
――そう、思っていたのに。