結婚前夜に殺されて人生8回目、今世は王太子の執着溺愛ルートに入りました!?~没落回避したいドン底令嬢が最愛妃になるまで~
「お父様、お母様、私に任せてください。今日呼ばれているパーティーで、必ず素敵な人を見つけてきます」
 広間で覇気のない様子でソファに座っている両親に、この言葉を伝えるのも八度目だ。
「エルザ……そんな、無理しなくたっていいのよ」
「いいえ。私ももう十八歳。立派な大人です。九年、お父様とお母様にたいへんお世話していただきました。これからは、私がお返しする番です」
「……エルザ」
 涙目になり、私を見つめる両親。ふたりは私の婚約、そして結婚が決まった時、以前のような笑顔を見せてくれるのも知っている。結婚前夜の小さなパーティーには、アルノーも参加してくれた。私はそんな幸せな時間の続きが見られるまで、人生を、結婚を、諦めるわけにはいかない。
 よりよい縁談を結ぶためには、人脈が大事だ。今日のパーティーにはいろんなところから人が集まる、またとないチャンス。
 この機会を逃すと、いい婚約者を見つけることはできなくなる。
 私は侍女に頼んで目一杯めかしこんでもらい、日が沈む頃、王宮へと八度目の馬車を走らせた。

 王宮の門の前へ着くと、私と同じパーティー参加者がぞろぞろと入り口に向かっている。
 今回のパーティーは、私が生まれ育った国、ローズリンド王国の王家主催の大規模なパーティーだ。毎年、ローズリンド王立学園の卒業式が行われた一週間後に開催される。
現役の学園関係者は無条件で参加可能。その他は王家と関わり深い名家や他国のお金持ち等、上流階級の者が参加する。よって、私が無条件で参加できるのはこれが最後の機会。  なぜなら今年卒業した私は、来年から学園関係者でなくなるからだ。卒業生は誰でも参加できる、みたいな甘い条件は持ち合わせてくれていない。そんなことをしたら毎年人数が増えていき、招待状などの処理もたいへんになるからと聞いたことがある。
 パーティーは王宮の一部を使って、優雅な音楽にダンス、美味しい食事、それらを嗜みつつ社交を存分に楽しむもの。……ついでに言うと、私は繰り返す人生の中ですべて、このパーティーで結婚相手を見つけていた。
 孤児だった私がこんな煌びやかな場所に参加できるのも、学園に通わせてくれた両親のおかげだ。アルノーも来年には入学を控えているが、本人があまり乗り気でない。加えて学費も高いため、もしかしたら通わないという選択肢をとる可能性がある。それだけは避けたい。
 私自身がお金を稼げる能力があれば、どれだけよかったか……。
 どうせループするなら、もっと過去に戻してほしかった。そうすれば詐欺も防げたし、私も出世できるよう努力したのに。残念ながら、この時の私はごく平凡な令嬢で、これといった特技もない残念な女だ。敢えて特技とするならば、他人より記憶力がいいことだろうか。
 人の流れに乗りながら、私はようやくパーティー会場となる大広間へとたどり着く。いろんな色の派手なドレスが会場内を埋め尽くし、目がちかちかした。
 さてと。時間が許す限り、いろんな人と話さないと。
 この空気に圧倒されないよう、気合を入れなおす。すると、会場に着くなり嫌な視線を感じおもわず鳥肌が立った。
 嫌な視線の先を辿ると、そこにいたのは――ノア・ディールス第一王子だった。
 ノア様は容姿端麗、成績優秀、強い魔力を持った、非の打ち所がない完璧王子様。だが……私は彼の光輝く金色の髪と、透き通るアクアマリンの瞳が赤に染まるところを知っている。
 そう、これまでの人生で私を殺している張本人――それが、あのノア様なのだ。
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