恋の罠は酷く切ないけど甘い


そんなことをグルグルと考えていると、隣の代表が小さく息を吐いたあと申し訳なさそうな表情を浮かべる。

「俺のせいかもな。悪い」
「いえ、仕事ですし、私にとっては代表との仕事はとても勉強になるので。それにもし本当に私に用事があれば、探偵ぐらい雇う人たちなので気にしないでください」
実家のことで迷惑をかける方が、申し訳なくて笑って見せる。

「そうか、何かあったらいつでも言えよ」
ポンと私の頭に触れると、代表は穏やかな笑みを浮かべた。

「はい。それで私に何かあったんですよね?」
わざわざここまで私を探しに来た彼に、私は思い出したように問う。

「ああ、そうだった。この話を聞いて言いにくいんだが」
今までの先輩の顔は潜め、経営者の顔へと変わる。

「大きな仕事が入る」
今でもかなり大きな仕事をしている彼が、わざわざ大きいということに私も背筋が伸びる。

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