恋の罠は酷く切ないけど甘い
この二年で国内外に多くのリゾート施設をオープンさせていて、どこもかなりの成功を収めているらしい。

中には過疎地もあり、地域活性化にも一役買ったと称賛されていた。
どの施設も立地選びやコンセプトが素晴らしく、それが天才と言われる所以のようだ。

「このホテルもテイラーキャセルホテルか……」
「ええ、そこは彼の父と兄が中心となり経営をしているそうです」
思い出しながら答えた私に聞こえたのは、めずらしい代表のため息にも似た吐息。

「サラブレットってわけか」
彼はその巨大ビルを見上げながら、そう呟く。

そう、藤本彰斗は昔からエリート中のエリートで、私なんかとは住む世界が違う人。

色々あったからといって、ずっとバカみたいに引きずっているなんて滑稽だ。
ため息をつきたくなるのを耐えつつ、もう一度彼の会社の入っているビルを見た。

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