恋の罠は酷く切ないけど甘い

エントランスに入ると、三階ほどの高さがある吹き抜けのフロア。そこの中央には立派な総合インフォメーションがあった。
美しく洗練された人たちがにこやかに座っていて、にこやかに対応してくれた。

案内された高層エレベーターに乗り込むと、音もなくすぐに上層階へと着いた。
ポンと軽やかな音とともに、目の前に絨毯張りの廊下とゴールドの文字で社名が目に入る。
それだけで少し緊張してしまった私に、「お待ちしておりました」と落ち着いた声が聞こえた。

私たちを出迎えてくれるために待機していたようで、男性がにこやかに頭を下げる。
「藤本の秘書の水戸川と申します。こちらへ」
私たちも小さく会釈をして、彼の後についていくと、すりガラス自動ドアがあった。
セキュリティも完璧のようで、彼はカードをかざしてから扉を開け私たちを促す。

そして一つの木製の扉前で水戸川さんは止まった。
心臓が早鐘のように打っていしまっているのは仕方がない。
世界的な企業のトップに会うのだから当たり前。そう自分に言い聞かせる。

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