恋の罠は酷く切ないけど甘い


今年28歳になったはずだ。

身長は180㎝を超え、何頭身かと思うほど手足も長く、モデルや芸能界から、何度もスカウトをされてきたのを高校時代も見ている。

しかし、そんな昔より貫禄とオーラが増し、切れ長の二重の瞳は怖いほどすべてを見透かしそうな気がしてしまう。
ブラック髪はきちんとセットをされていて、目元には昔はかけていなかった、シルバーフレームの眼鏡。

いつもにこやかに笑っていた印象だったが、今の彼からは完璧な経営者の顔をしている。

「今回のプロジェクトで私の第一補佐に入る月城です。しかし、あの先ほど……」

私を紹介したものの、先ほど彼が私に向けた言葉に代表は疑問を持っているようだ。
私は何を言うべきなのかもしれないが、言葉も出ないし藤本社長の顔もみることができない。

何を考えているの?

そう問えるわけもなく、私はただ黙っていた。
「高校時代の後輩なんですよ」
あろうことかサラリと言った彼に、代表がバッっと私に視線を送る。
あの時、会社名が出た時の私の態度の意味を悟ったのだろう。
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