恋の罠は酷く切ないけど甘い

そんな私を代表はチラリと見た後、なぜか彼に挑むような視線を向けた。
「藤本社長、今回の我社への依頼ですが、まさか月城がいたからとかはおっしゃいませんよね?」
え? まさか。そんな可能性があるわけがない。

代表の問いに、藤本社長は自分の親指を唇に当てて私をジッと見つめた。
妖艶さすら感じるその瞳に、私はもはや何がおきているかわからない。
しかし、その表情は一瞬で、スッと薄い笑みを浮かべ代表へ向き直る。

「もちろん、私はあなたの才能に仕事を依頼しています。月城さんが今日ここにくることは私は知りませんでしたよね?」
その答えに代表は冷静な瞳を浮かべていた。

「そうですね、それならよいのです」
一転してニッコリと笑みを浮かべた代表に、藤本社長が「よろしくお願いします」そう手を伸ばした。

男性二人が固く握手するのを、私は落ち着かない気持ちで見ていた。
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