恋の罠は酷く切ないけど甘い
「それではこれからよろしくお願いします」
今後のスケジュールなどの打ち合わせを終え、代表の言葉に私はようやくこの場が終わるとホッと息を吐いた。
早々に立ち去りたくて、バッグを手にして立ち上がった時だった。
「この後のご予定は? 食事でもいかがですか? 親睦をかねて」
藤本社長は先ほどのトーンのまま、にこやかに私たちに問う。
もちろん、私としてはすぐにこの場から離れたかったが、大口のクライアンとからの誘いを無下に断ることなどできない。
代表は先ほども強く、私のことを言ってくれただけに、またもや私が代表の足をひっぱることにはなりたくない。
チラリと向けられた代表の視線に、私は同意するように小さく頷いて見せる。