天帝の花嫁~冷徹皇帝は後宮妃を溺愛するがこじらせている~
「女官たちは直接雲朔と関わったことがあるわけではないから、どれも噂にすぎないわね」

 花茶を飲みながら私は言った。

「そうですけど、慈悲深く身内思いの帝っていう評判があるのは意外でした。まあ、皇帝のことを悪く言ったらどうなるかわからないから、とりあえず褒めたたえたって可能性もありますが」

 亘々はお茶菓子を頬張りながら、身も蓋もない話をする。

「もしかしたら雲朔は二面性があるんじゃないかしら。まだ完全に尸鬼に乗っ取られているわけではないのかも」

一日中雲朔の情報を集めていたら、だんだんと雲朔が尸鬼に乗っ取られたという仮説を信じるようになっていた。まだ仮説でしかないのに、私たちの会話はすっかりそれが真実だという前提で進められている。

「二人でいる時、昔の雲朔様だって思うような場面ありましたか?」

 亘々の問いに、私は首を傾げて記憶を辿った。
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