天帝の花嫁~冷徹皇帝は後宮妃を溺愛するがこじらせている~
「う~ん、とっても優しいのだけれど、これじゃない感の方が強いのよね。一緒にいると緊張しちゃって落ち着かないし」

「それならやっぱり元の雲朔様じゃないと思います。体を乗っ取った尸鬼なら、昔の記憶を知らないかもしれませんよ。どうやってお嬢様の情報を手に入れたのかはわかりませんが、昔の偽りの出来事を話したら乗ってくるかもしれない」

「でも、八年前の記憶よ? 雲朔も忘れているかもしれない」

「ちょっとお嬢様。記憶力抜群の超絶賢い雲朔様が、お嬢様に関する記憶を忘れるとでも?」

 じとっとした目で見つめられ、私は苦笑いを浮かべた。

「そ、それもそうね……」

「よし、そうと決まれば今夜が楽しみですね!尸鬼の尻尾を掴んできてください!」

「わかったわ!」

そして私たちは、雲朔を迎い入れる準備に取りかかった。雲朔と会うのは気が進まなかったけれど、目的があるなら別だ。

好きな人に会うとは別の高揚感に包まれた。

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