天帝の花嫁~冷徹皇帝は後宮妃を溺愛するがこじらせている~
「あんな冷たい川に飛び込んだものだから、私たち風邪をひいてしまったわよね」

「違うよ、風邪をひいて寝込んだのは俺だけだった。華蓮は次の日から元気に走りまわっていた」

「ああ、そうだったわね。雲朔は体が弱かったのに、私を助けるために川に飛び込んでくれた」

「……違うよ、華蓮は俺を助けるために川に飛び込んだんだ」

「そうね、助けてもらったっていう印象が強くて忘れていたわ。私は川に飛び込んだけれど、雲朔を助けられなくて、結局最後は雲朔に助けてもらった。なにしに川に飛び込んだのかわからないわよね」

私はなんでもないように取り繕い、ふふふと笑った。

 雲朔はそんな私の顔を訝しげに見ている。

「……華蓮、なにを探っているんだい?」

 どきりとして肩が上がった。

(さすが雲朔、鋭い……)

 しかし動揺を気付かれないように、努めて明るく接した。

「雲朔こそなにを言っているの? 八年も前のことよ、記憶がおぼろげになってもおかしくないわ」
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