天帝の花嫁~冷徹皇帝は後宮妃を溺愛するがこじらせている~
「俺は巷では、残虐非道な皇帝と恐れられているらしい。確かに俺は、目的のためなら手段を選ばない」

 雲朔は射るような眼差しで私を見つめた。怒らせたかもしれないと思って青くなる。

「強い男になって、華蓮を守りたかった。でも、華蓮は昔のなにもできない弱い俺の方が好き?」

「……雲朔は、なにもできない男じゃなかったわ。私を後宮から出して助けてくれた」

 私は絞り出すように言葉を続けた。

「雲朔は、とても勇敢で頼りになる、そんな人だった……」

 雲朔の目をしっかりと見つめて言った。

「過去形……だね」

 雲朔は自嘲するように薄く笑い、私から目を逸らした。

「上手くいかないものだな……。全てを手に入れたのに。一番大事なものが、俺の手から零れていく」

「雲朔……、なにがあったの? こんなに変わってしまうだなんて」

 雲朔は悲しそうな目で、私を横目に見た。

「変わることはいいことだと思っていた。変わらなきゃ駄目だと思っていた。それがまさか、華蓮から嫌われることになるとは」
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