天帝の花嫁~冷徹皇帝は後宮妃を溺愛するがこじらせている~
「きらってなんか……」

「でも、怖いと思っているだろ?」

「それは……」

「気付いていたよ、最初から」

 絶句した。自分の気持ちが気付かれていたのだとしたら、きっと雲朔はずっと傷ついていたはずだ。

「知りたい? 俺の八年間」

 私はこくりと頷いた。

「楽しいものではないよ、それでも知りたい?」

「雲朔のことなら、どんなことだって知りたいわ」

 雲朔は少しだけ嬉しそうに笑った。その恥ずかしそうな柔和な微笑みが、昔の雲朔の笑顔と重なった。

「じゃあ、見せてあげる。おいで」

 雲朔は立ち上がって、私に手を出した。差し出された手を取り、私も立ち上がる。

「見せる? どういうこと?」

「修行の終わりの祝い品で貰った真眩鏡(しんげんきょう)。罪人の所業を知るために貰ったのに、まさか自分が最初に使うことになるとはね」

 雲朔は自嘲するように笑った。

 よく分からないけれど、とりあえずついていこうと思う。

 雲朔の過去が見られるならば見たい。それが、どんなものであろうとも。
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