天帝の花嫁~冷徹皇帝は後宮妃を溺愛するがこじらせている~
私たちは後宮を出て、内廷にある皇帝の宸室(しんしつ)に行った。雲朔と一緒なので、後宮から出ても誰も文句はいわないし、宸室にもあっさりと入れた。

 宸室とはいっても、皇帝専属の部屋なので一つではない。様々な部屋を通り抜け、一番奥の部屋に辿り着いた。

 厳重な分厚い扉を鍵で開けて中へ入ると、二十畳ほどの広さの部屋だった。

 まるで執務室のようなその部屋は、壁一面に本が飾られていた。そして中央には黒檀の丸机が置かれている。

 雲朔は長方形の金庫の中から、顔よりも大きくて丸い黒鏡を取り出した。一見して古いものであることがわかる。しかし、鏡のふちは龍の形に縁取られ、とても高価なものであることが推察できた。

 雲朔はその鏡を黒檀の机の中央にそっと置いた。鏡は黒く、何も映っていない。
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