天帝の花嫁~冷徹皇帝は後宮妃を溺愛するがこじらせている~

こじらせ溺愛の不器用な真実

  暗闇の中で、雲朔が金蜥蜴の後を追っていた。

たったそれだけの映像なのに、命懸けの脱出に成功したことがわかる。断片的な過去を映し出しているにも関わらず、まるでその場にいたかのように、その時の状況、雲朔の気持ちなども体に流れ込んでくるように理解することができた。

(なにこれ、凄い)

 私は興奮して、食い入るように鏡の映像を見続けた。

 雲朔は皇居を出ると、金蜥蜴の後を追い、崑崙山(こんろんざん)を登っていた。どうして山なのかは雲朔自身にもわかっていないようだけれど、金蜥蜴を追いかけると決めたので、とにかく必死で追いかけているらしい。数日かけて険しい山を登った雲朔は途中で力尽きて倒れてしまった。

(えぇ、どうなるの⁉ ていうか、そこまでして金蜥蜴を追う必要ある⁉)

 鏡の中の少年時代の雲朔にそう言いたいが、あいにくこれは過去の映像だ。伝わるわけもない。
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