天帝の花嫁~冷徹皇帝は後宮妃を溺愛するがこじらせている~
「雲朔は、敵でさえも救おうとしたのね。それなのに私は、雲朔が数万の命を奪ったのだと思っていたわ。ごめんなさい」

 私が謝ると、雲朔は少し悲し気な表情を浮かべた。

「実際にあの戦いで亡くなったのは、数万ではなく数千人ほどだったと思う。ただ、噂は大きくなって広まるのが常だし、俺が戦いを挑まなければ失わなくて済んだ命もあるから、噂を否定せずにいたんだ」

「事実をちゃんと伝えた方がいいわ。皆は雲朔を誤解している。……私のように」

 私が申し訳なさそうに俯くと、雲朔は優しい微笑みで、昔のように私の頭をなでた。

「そうだね、これからはそうするよ」

 昔のような微笑みで、昔のように頭をなでられたのに、どうしてか昔とは違う感覚になる。

 昔は、頭をなでられたら嬉しくて、もっと褒められたいと思った。

 でも今は、その感情とは違う。現在の雲朔の手はとても大きくて、否応なしに男性という意識が勝ってしまって、ふれられると身構えてしまう。
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