天帝の花嫁~冷徹皇帝は後宮妃を溺愛するがこじらせている~
 後宮に戻ると、外はすっかり朝になっていた。

 紅閨宮まで私を送り届けると、雲朔はすぐに外廷へと仕事に向かった。

 私が寝台に横たわると、猛烈な勢いで亘々が部屋に入ってきた。

「お嬢様、大丈夫ですか⁉」

「ええ、生きているわ」

 私は布団をかぶり、大きなあくびをしながら億劫そうに返事をした。

「気がついたら紅閨宮にいないので心配しましたよ! どこに行っていたのですか?」

「皇帝の宸室よ」

「えっ……」

 亘々の反応から、宸室と聞いてどういう想像をしたのかがわかった。

「違うわよ、なにもなかったわ。ただ、不思議なものを見せてもらったの」

 厳密にいえば唇を重ねているので、なにもなかったわけではないのだが、そこは恥ずかしいので隠してしまった。

「不思議なものとは?」

「う~ん、話すと長くなるから、後でいい? 昨夜は一睡もしていないから眠くて」

 亘々は今すぐに聞きたい気持ちをぐっと堪えた。

「わかりました。すみません、押しかけて」
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