天帝の花嫁~冷徹皇帝は後宮妃を溺愛するがこじらせている~
(そうだったのね。いつも私に食べ物をくれるから小食なのかと思っていたわ)

 長年の我慢の糸が切れたらしい。苦労をかけてしまったなと思った。

「それより、昨夜見た不思議なものってなんですか?」

「ええ、それが……」

 私は真眩鏡に映し出された雲朔の過去を全て話した。

 亘々は驚きの眼差しで、真剣に私の話を聞いた。

 全てを聞き終えた亘々は、複雑そうな表情を浮かべていた。

「……先入観って怖いですね。数万人の罪なき人々を殺したと思っていたので、過剰に雲朔様を恐れてしまっていました。たしかに雲朔様の雰囲気は変わったけれど、中身はお優しい雲朔様のままだったのですね」

 亘々はしょんぼりと項垂れて、遠くを見つめながら、お饅頭をぽいと口に入れた。もぐもぐもぐ、と緊張感のない顔で咀嚼する。

(反省の弁を口にしているけれど、全然心を痛めていなさそう)

「そ、そうね。真面目で実直だから怖そうに見えるだけだったみたい」
< 120 / 247 >

この作品をシェア

pagetop