天帝の花嫁~冷徹皇帝は後宮妃を溺愛するがこじらせている~
「まあ、そうと分かっていても、もう二度と二人きりになるのはごめんですけどね」

 よほどこの前のことが堪えているらしい。亘々らしくて笑ってしまった。

「雲朔は不器用なだけなのよ」

 愛おしそうに呟いた私の変化に、亘々は素早く気がついた。

「おや、お嬢様。ついに恋する乙女の顔になりましたね」

亘々がにやにやしながら言うので、私は恥ずかしくなって頬を赤らめながら否定した。

「ち、違うわよ!」

「違うのですか?」

 わざとらしい顔でとぼけて見せる亘々。

 昨夜の口付けを思い出し、私は肩をすくめる。

「違わないとも言いきれないけど……」

 ほぼ肯定する言葉が出てきて、亘々は両手を挙げて万歳した。

「いや~、めでたい! 十日後に好きかどうかわからなくなった相手と結婚しなければいけないなんて不憫だと心を痛めておりましたが、一番いい形に収まりましたね!」

 私もこんな気持ちのまま雲朔と結婚することは気が進まなかったので、亘々と一緒になって笑顔になるも、一点だけ気になる言葉が出てきた。
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