天帝の花嫁~冷徹皇帝は後宮妃を溺愛するがこじらせている~
はい、知らなかったんですか?」

「聞いてないわよ。どうして私が知らなくて亘々が知っているのよ」

「いや、まさか本人が知らないとは思わないじゃないですか」

(えぇ……そうかもしれないけど)

 まったく悪びれることなく言われたので、言い返す言葉もなかった。

「いいじゃないですか、今さら。すでに宮も与えられて夜渡りもある。ただ形式上の儀式をするだけですよ」

 亘々はお饅頭をひょいと口に入れた。

(それも、そうね。今夜雲朔に会ったら、儀式のことを聞いてみよう)

 私は今夜も当然、雲朔が訪れると思っていた。

 甘い口付けをしたあとだ。少し気恥ずかしい気持ちはあるけれど、今までとは違って会うことが楽しみだった。

けれど、雲朔は来なかった。

 疲れて眠っているのだろうと思ったけれど、その次の日も来なかった。その次も、その次の日も来なかった。

 そうして次に雲朔と顔を合わせたのは、婚姻の儀式の間だった。
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