天帝の花嫁~冷徹皇帝は後宮妃を溺愛するがこじらせている~
 私が必死になって訴えると、雲朔の表情がみるみるうちに曇っていった。

「華蓮、なにが言いたい?」

雲朔の顔から笑みが消えると、冷徹皇帝といわれるだけあって静かな迫力がある。

「ただ……私は……足手まといになりたくなくて……」

 私は途端に萎縮してしまって、目を伏せ、声が小さくなっていった。

「華蓮、俺は怒っているわけではないよ。俺を見て」

 私は怯えた目を見上げて雲朔を見る。

 雲朔は私がこれ以上怯えないように、私の両手を優しく握った。

「簒奪帝のせいで、国の資金はひっ迫しているのでしょう? そんな時に私だけ良い暮らしをするなんて耐えられないわ」

「そうか、華蓮は優しいね」

(いや、そうじゃなくて)

 なぜにそういう結論になる。

 雲朔が私を溺愛しているのは伝わってくる。賢く、いつも正しい判断を下す雲朔だが、私のことになると無茶をしたりする。そういうところが私は不安だった。

 いざとなったら国や自分のために私を切り捨ててしまって構わないと思っているのに、雲朔は決してそんなことはしないだろう。
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