天帝の花嫁~冷徹皇帝は後宮妃を溺愛するがこじらせている~
  迷うことなく自分を犠牲にするだろうし、私のためなら国を切り捨てる判断をしてもおかしくない。

「あのね、雲朔、私は……」

「うん、華蓮が思っていることは俺にはわかるよ。でもね、華蓮……」

 雲朔は私の手をぎゅっと握りしめて、冷静な目で語った。

「皇帝や皇后は、国の顔なんだ。皇后の生活がみすぼらしかったら国民や他国の者たちはどう思う? よほどお金がないのかと国民は心配になるし、今が好機と他国から思われ侵略戦争を仕掛けられるかもしれない。我々はどんな時であっても胸を張り微笑みを顔に張り付けていなければいけない。多少の見栄は戦略だ。俺はこれからなにがあろうとも国を立て直す。不安だろうけれど、数年辛抱してほしい」

 雲朔の言葉に、不安でいっぱいだった私の気持ちが穏やかになっていく。

(そうね、その通りだわ。新皇帝になったのは、誰よりも賢い雲朔なのよ。私があれこれ心配するより、雲朔に任せた方が賢明だわ)

「……わかったわ、あなたを信じる」

 私は雲朔の目をじっと見て、微笑んだ。

 雲朔も安心したように微笑み、そっと私の額に口付けを落とした。

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