天帝の花嫁~冷徹皇帝は後宮妃を溺愛するがこじらせている~


「……ということだから、国のことは雲朔に任せましょう」

 次の日、ゆったりとお茶を飲みながら、昨夜の会話を亘々に告げた。

「う~ん、上手く丸め込まれた気がしないでもないですが……」

 亘々はあまり納得していない顔をしながらも、私の意向をくんだ。

「そう?」

「大家は娘々に心配をかけたくないのでしょうね。男の矜持もあるでしょうし」

「でも私があれこれ気を揉むより、雲朔が考えた案の方が確実で正しいと思うの」

「まあ、それはそうでしょうね」

 そこは納得するのか、と私は思った。

「簒奪帝を倒して、ハイ、おしまい、にはならないと思うんですよ。むしろ本当に大変なのはこれからなんじゃないかと思ったりもするんですよね」

「亘々が不安に思うことは私も感じるわ。なにか嫌な予感がするの。でも、私にはどうすることもできない」

「そうですね、我々にはどうすることもできない」

 亘々も納得した。

「私ができるのは、雲朔を支えること。余計なことをして迷惑をかけたくはないわ」

 亘々も静かに頷いた。

(雲朔なら大丈夫。数年後には軌道に乗っているはず)

 自分に言い聞かせるようにそう思った。
 
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