天帝の花嫁~冷徹皇帝は後宮妃を溺愛するがこじらせている~


 皇帝の私室で、俺は一人で竹簡に目を通していた。

 かつて俺の父が使っていた秘密通路扉が繋がっているあの部屋だ。黒檜の執務机の引き出しの中には玉璽が入っている。

簒奪帝の盾公は玉璽を失い怒り狂っていたという。玉璽は皇帝のみが使うことを許された印章だ。帝権の象徴とされている。

玉璽を失った簒奪帝は、天に認められていない者と国民から思われていたが、自分に意見する者は容赦なく死刑にしていたので帝の地位を降ろされることはなかった。

簒奪帝を倒すため味方を集める時、この玉璽が非常に役に立った。正統な血統に加え、玉璽を持っているということは天に認められし者の証である。皇帝が天帝と呼ばれる由縁もそこにある。

(想像以上に国の財政はひっ迫している。簒奪帝時代に上げられた税負担を下げたいが、多額の債務が払えなくなり財政破綻する。資金を増やすために種は色々蒔いているが、それが育つまでに数年はかかる)
< 145 / 247 >

この作品をシェア

pagetop