天帝の花嫁~冷徹皇帝は後宮妃を溺愛するがこじらせている~
 その日の夜。

 俺はいつもと変わらず華蓮の元を訪れた。

 数日後に出立するとはいっても、なるべくいつも通り過ごして、華蓮に余計な心配はかけさせたくなかった。

 しかし……。

「尸鬼が出たって本当⁉」

 華蓮は俺に会うなり、国家秘密を容易に口にした。

「華蓮……なぜそれを知っている」

 俺は頭が痛くなってきた。こんな大事な情報が外に漏れている。

 華蓮は皇后とはいっても政治に関与していない。それなのに知っているということは……。

「え? 宮廷内ではその話で持ち切りだそうよ」

 ……やっぱり。

 俺はこめかみを抑えた。ズキズキとする頭痛を抑えるためである。

 一枚岩にならなければいけない大事な局面だというのに脆すぎる。臣下の心はバラバラで、皇帝への信頼も薄いことが今回のことで露呈してしまった。

 華蓮は俺の反応を見て、噂が本当であったことを確信したようだ。

「ねえ、雲朔、尸鬼って実在するの?」

 華蓮は怯えるような目で言った。
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