天帝の花嫁~冷徹皇帝は後宮妃を溺愛するがこじらせている~
「わからない。ただ、もしも報告通り、尸鬼が発生したとなったら大変なことになる」

「大変なことって?」

「大栄漢国が、尸鬼に喰われる」

 華蓮は目を見開いて息を飲んだ。

「尸鬼は人々を喰い殺し、仲間を増やしていくと聞いたわ」

 尸鬼は元々言い伝えで広まった昔話に出てくる鬼で、子供たちが悪さをしないように怖がらせる目的の架空の話だ。それが実際に現れたとなると、どんなことになってしまうのか。

 華蓮が怖がっているのを見て、俺は安心させるように頭をなでた。

「大丈夫だよ、俺が全て切り倒すから。数日後に出立するんだ。さっさと片付けてくるよ」

「雲朔が行くの?」

 華蓮は、とんでもないといった表情で俺を見た。

「そうだ。この国で一番強いのは俺だ。俺が行かなくて誰が行く」

「でも、尸鬼は元々死んだ人間よ。斬れば死ぬのかしら」

「胴体を真っ二つに斬れば動けないだろ」

「もしも動いたら?」

「バラバラに斬ればいい」

「分裂したみたいに動いて、さらに仲間を増やしていったら?」

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