天帝の花嫁~冷徹皇帝は後宮妃を溺愛するがこじらせている~
 なかなか気味の悪いことを言うな。

 次から次に最悪の状況を華蓮が口にするので、元から苛々していたこともあり、ついに怒ってしまった。

「そんなのわからないよ! やってみるしかないだろ!」

 華蓮が思いついた最悪の状況は、俺も当然想定していた。むしろ俺はもっと最悪な状況も想定していた。

 尸鬼は触れたものを全て腐らせるという。尸鬼を斬った剣は錆てしまわないか。そもそも、尸鬼を倒す術はあるのか。尸鬼の生体を知らないまま特攻するのは、あまりにも危険で浅はかではないのか。

 しかし、早急に動かなければ尸鬼が仲間を増やして手遅れになってしまう。むこうみずではあるが、やるしかない。だからこそ、華蓮の言葉は痛いところを突かれているので癪に障ったのだ。

「ごめんなさい、でも、雲朔が死んでしまったら、それこそこの国は終わるのよ?」

「華蓮は俺に、臣下を捨て駒にして尸鬼の生体を探れというのか? 俺はもう犠牲者を出したくないんだ」
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