天帝の花嫁~冷徹皇帝は後宮妃を溺愛するがこじらせている~
「雲朔は優しすぎるのよ!」

 華蓮は叫んだ。

「高官たちもどうかしている! こんなわけもわからない生き物と戦うのに、皇帝が戦いに行くことを許可するなんて!」

 華蓮が大きな声を出すので、俺は逆に声を落とした。

「皆、尸鬼が怖ろしいんだよ。そんなものと対峙したくないんだ。だから俺が……」

「違うわよ、皇帝が死んでもいいと思っているのよ、だから……」

「それ以上言うな! わかってる!」

 俺は声を荒げた。

 華蓮はビクっとして、言葉を飲み込んだ。

 俺が簒奪帝を倒し、新皇帝になったからといって、臣下が忠実とは限らない。俺が仲間にした者たちは、元はただの村人だ。

 しかし、簒奪帝の元で堕落しきった武官たちよりも腕は立つし優秀だ。今では大栄漢国の武官として高い位を与えている。その者たちからの信頼は厚いが、文官たちは俺が皇帝となってから知り合った者たちばかりだ。

 まだ日も浅く、信頼を築けていない。それに、皇帝となってすぐ政治を高官たちに任せ、華蓮を探す旅に出ていたのもいけなかった。
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