天帝の花嫁~冷徹皇帝は後宮妃を溺愛するがこじらせている~
 国が大変な時期に高官たちは必死で立て直した。皇帝がいなくても自分たちでなんとかできると思っている。

 だからこそ、今回のことは俺自身の手で解決したかった。

 もしも尸鬼を倒せたら、唯一無二の存在として尊敬されるだろう。皇帝として箔をつけるためにも、俺自らが前線に赴き、戦って勝利しなければいけないのだ。

 ……ただ、華蓮の言う通り、あまりにも無鉄砲な計画だった。

 わかっている、俺は焦っているんだ。新皇帝となったときは期待でもてはやされたが、莫大な借金をすぐになくすことはできず、臣下や国民からの支持は薄れていった。華蓮にまで心配される始末だ。

 だからこそ、華蓮の言葉が胸に刺さった。

「ごめんなさい、私……」

 華蓮は言い過ぎてしまったと反省しているようだ。俺が全部わかっている上で、出立の覚悟を決めたとは思ってもみなかったのだろう。

「俺こそ、ごめん」

 俺も感情的になったことを反省した。

 これじゃまるで八つ当たりみたいだと思った。

(なにもかも上手くいかない。国は借金だらけで、臣下からの信頼も薄い。こんな奴が皇帝だなんて笑える……)
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