天帝の花嫁~冷徹皇帝は後宮妃を溺愛するがこじらせている~
初恋の約束
(あの頃は、お父様がいて、亘々もいて、なにより雲朔(うんさく)がいつも側にいた。幸せだった……。もしかしたら、幸せすぎたのかもしれない。だから神様は、私から大切なものを一度に奪っていったのかしら)
八年前の記憶は、私にとって玉石のように輝く思い出と共に、凄惨な喪失感に苛(さいな)まれる心の傷でもあった。
―― 八年前。
大栄漢(だいえいかん)国。血みどろの戦にまみれた時代は終結し、帝国の政治は安定して、繁栄の治世となった。
それまでは血筋に関係なく強き者が皇帝となり、数十年で国の長が変わっていたが、大栄漢国を築いた鴛(えん)家が三世代にわたって王位を継承している。
董家の一人娘であった私は、たった四歳で後宮の九嬪(きゅうひん)である昭媛(しょうえん)の位を賜った。
つまり、四歳にして嫁入りしたのである。