天帝の花嫁~冷徹皇帝は後宮妃を溺愛するがこじらせている~


 尸鬼が出たという島にいく途中、野営して一夜を過ごそうとしていた俺たちの軍は暗い雰囲気が漂っていた。

 皇帝となって旅に出るのは初めてのことではない。華蓮を探すために国中を歩き回った。

 しかし、今回の旅は前回とは決定的に違っていた。

『尸鬼が出た』

 というのは、すでに国中に広まっていた。人の噂の早さというのは驚異的である。

 尸鬼を討伐しに皇帝自らが出立したというのに、国民の目は冷たかった。

 前回の旅では、簒奪帝を倒してくれた新皇帝という歓迎する温かさがあった。

 簒奪帝は重い税を課していたので、皇帝が変わったら生活も豊かになると期待していたのだろう。

しかし実態は変わらなかった。

 重い税のまま暮らしは一向に豊かにならない。加えて尸鬼の発生である。

 天が皇帝を決めると信じている信仰深い国民性なので、尸鬼という得体の知れない呪われた生き物が出たということは、天がお怒りになっている証だと思っているのだ。

 尸鬼の発生は、皇帝の評価を著しく下げた。
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