天帝の花嫁~冷徹皇帝は後宮妃を溺愛するがこじらせている~
「それより、なぜ儂を呼んだ」
「呼んだ……のかはわからないのですが、天に祈ったのです。どうか雲朔を助けてほしいと」
「雲朔がどうかしたのか?」
穏やかだった老人の雰囲気が険しくなる。私はこれまでにあったことをできるだけ詳細に説明した。尸鬼が発生し、雲朔が対峙しに出立したこと。尸鬼の正体も倒し方もわからないこと。老人は黙って私の話を聞き、そして口を開いた。
「尸鬼の正体は悪霊じゃ。不平不満、愚痴が多く、努力はしないのに他責思考の者に悪霊が寄って来る。悪霊は淀んだ魂が大好物じゃ。
引き寄せられ寄生虫のように人間の体に住みつく。昔からの言い伝えで尸鬼になるぞ、というのは悪霊に憑りつかれるという比喩なのじゃ。
しかし、今回の場合は見た目も変わり果ててしまった。つまり、それだけ強い悪霊が憑りついたということじゃ。何百、何千人もの命を奪うような怖ろしい行いをした者しか、それほど強い悪霊にはならない」
何百、何千人もの命を奪った残忍な人物。私はそんな怖ろしい人間を一人しか知らない。
「まさか、簒奪帝……」
「呼んだ……のかはわからないのですが、天に祈ったのです。どうか雲朔を助けてほしいと」
「雲朔がどうかしたのか?」
穏やかだった老人の雰囲気が険しくなる。私はこれまでにあったことをできるだけ詳細に説明した。尸鬼が発生し、雲朔が対峙しに出立したこと。尸鬼の正体も倒し方もわからないこと。老人は黙って私の話を聞き、そして口を開いた。
「尸鬼の正体は悪霊じゃ。不平不満、愚痴が多く、努力はしないのに他責思考の者に悪霊が寄って来る。悪霊は淀んだ魂が大好物じゃ。
引き寄せられ寄生虫のように人間の体に住みつく。昔からの言い伝えで尸鬼になるぞ、というのは悪霊に憑りつかれるという比喩なのじゃ。
しかし、今回の場合は見た目も変わり果ててしまった。つまり、それだけ強い悪霊が憑りついたということじゃ。何百、何千人もの命を奪うような怖ろしい行いをした者しか、それほど強い悪霊にはならない」
何百、何千人もの命を奪った残忍な人物。私はそんな怖ろしい人間を一人しか知らない。
「まさか、簒奪帝……」