天帝の花嫁~冷徹皇帝は後宮妃を溺愛するがこじらせている~
痛んで雑巾のように汚れた布を着た人間らしき者が林の奥から出てきた。全身火傷をしたかのように黒くただれ、髪は抜け落ちたのか少ししか生えていない。顔の肉も落ち、白い頬骨が見えている。

(本当に死者が歩いているようだ)

 俺たちは固唾を飲んで尸鬼を見つめた。

 元は男なのか女なのか。それすらも判別できないほど体はただれていた。

「こいつぁ、おっかねぇ」

 雄珀は右の端の口角を上げて苦笑いするように言った。おっかないと口では言っていても、目は爛々で好奇心に満ちている。

 俺は目で弦武に合図をした。弦武は無言で頷くと、弓を引いた。

 ひゅんっと風を切る音がして、弓矢は尸鬼の左胸に命中した。心臓をとらえた渾身の一撃である。

「よしっ」

 俺と雄珀が小さな声で喜ぶ中、胸に矢を当てられた尸鬼は、なにが起こったのかわからず、刺さった矢を見下ろしていた。

 一拍の後、攻撃されたと理解した尸鬼が、天を切り裂くような金切り声を上げた。
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