天帝の花嫁~冷徹皇帝は後宮妃を溺愛するがこじらせている~
 思わず耳を塞ぐほどの身がすくむような嫌な周波数を出す高い声だった。

 わらわらと尸鬼が集まってきて、数十人ほどの尸鬼の団体が海の側に寄って来た。

「どうします? とりあえず出てきた連中に矢を当てますか?」

 弦武が聞く。

「致命傷にはなっていないようだが、怒っているということは効いてはいるってことじゃねぇか?」

 雄珀が攻撃を後押しするように言った。

「そうだな、一網打尽にできる好機かもしれない。弦武、いけ」

 俺の命令に、弦武は矢を次々と放った。頭、腹、股間、様々な場所に矢が刺さる。もちろん、的を外したのではない。どこが弱点なのか探っているのだ。

当てられた尸鬼は断末魔のような金切り声を上げるが、倒れる様子はない。矢の軌道から小舟を見つけた尸鬼たちは、怒り狂って俺たちの元へ行こうとするも、海に阻まれて近寄ることはできない。

「もっと距離を取れ」

 俺は船乗りに命じた。今日はここまでにするつもりだった。尸鬼の姿を見られたことでも大収穫だ。
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