天帝の花嫁~冷徹皇帝は後宮妃を溺愛するがこじらせている~
「海に捨てたら船乗りたち怒るだろ」

「まあ、そうですけど。その前に触りたくないですけど」

「だから、燃やしたら息絶えるかなと思ってよ」

 能天気な会話を聞きながら、燃えている尸鬼を注意深く観察する。水分が多そうで燃えないのかと思いきや、しっかり炭になっていく。良い方法だと思った。

 下火になっていく様子を見ていると、遠くの海の方で甲高く鳴る笛の音がした。

「この音は……」

 俺たちは目を合わせ、すぐに音の方に駆け出した。

この笛の音は、武官たちが鳴らしたものだ。なにかがあったのだ。

 武官たちの群れはすぐに見つかった。狼煙も上げてくれたので迷わず辿り着けた。

「なにがあった⁉」

「陛下、あ、あれを……」

武官たちは小高い丘の上から、海を指さした。そこには、島から泳いできた尸鬼の群れが、どんどん上陸していた。

 目視するだけで、ざっと数十人以上の尸鬼が陸地にいる。尸鬼の大移動だ。
< 197 / 247 >

この作品をシェア

pagetop