天帝の花嫁~冷徹皇帝は後宮妃を溺愛するがこじらせている~
あの時の戦いで、味方からも多くの犠牲者が出た。一人では決して勝てない戦だった。でも、やらなければいけない戦いだった。

「また、戦わないといけないのか」

「そうだよ、未来のためだ」

 国のため、未来のために亡くなっていく者たちがいる。彼らの命は無駄ではない。虐殺された者たちの命も無駄ではない。全ては未来に繋がっていく。そのために、俺たちは命を張る。

「大栄漢国のために! 行くぞー!」

声を張り上げ、先陣を切って丘を駆け下りていく。尸鬼の群れが俺たちに気づき、襲いかかってきた。

 躊躇なく尸鬼を切り裂く。

未知の生き物との戦いだったが、今回の方が気持ち的に楽だった。

簒奪帝との戦いは、大栄漢国の武官たちとの戦いだった。
殺すたびに、自分の大切ななにかが失われるような気がした。彼らにも、家族がいて、大栄漢国のために戦っているのだと思うと、剣を持つ手が震えた。

 すぐ隣で、味方が斬られ、それにカッとなって敵を斬る。

あの地獄に比べたらまだマシだ。尸鬼はもう、人間ではないのだから。
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