天帝の花嫁~冷徹皇帝は後宮妃を溺愛するがこじらせている~
 盾公は俺たちの憎悪を膨らませ、尸鬼にしてしまうつもりらしい。憎しみを操り、地獄へといざなおうとしているのか。

(このままではいけない)

 俺は皆の心に湧き上がった恐怖や絶望を打ち払うために大きな声を上げた。

「俺たちは負けない。何度絶望を味わおうとも立ち上がるぞ!」

剣を掲げ、空に浮かんだ盾公に向かって宣言する。

すると、地面でカサカサと音が鳴り、一匹の金蜥蜴が俺の体を這い上がっていった。あっという間に、剣を掲げた俺の腕を上がっていく。

「お前、いつの間に……」

 金蜥蜴は俺の手によじ登ると、トンっと空に向かって飛び跳ねた。

 その瞬間、金蜥蜴は、大きな麒麟(きりん)へと変貌を遂げる。

 麒麟は、神話に出てくる伝説上の瑞獣だ。顔は龍のように獰猛で、牛の尾と馬の蹄を持っている。

 麒麟は空に駆け上がり、盾公の形をした白い煙の中に突進すると、盾公はまるで絶叫するように消えていった。
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