天帝の花嫁~冷徹皇帝は後宮妃を溺愛するがこじらせている~
簒奪帝のせいで、天神への信仰心がなくなってしまっていた。

 神はどうして我々を助けてくださらないんだ。神なんていないのではないか。

 無慈悲に葬られる命の多さに、信仰心は消え、恨みつらみばかりが増えていく。それは仕方のないことだ。俺だって、どうして両親や兄弟が殺されなければいけなかったのか、いまだに納得してはいない。

華蓮の凄いところは、本人はなにも考えていないということだ。

ただ純粋に天に祈り、天の力を信じ、天に感謝をしている。

政治は狡猾なところがあって、国を挙げて宗教を推し進めるのは、人を動かしやすくするためでもある。

だから皇帝は神事を司っている。もちろんそれは一面であり、鴛家は心からの信仰心を捧げているが、歴史上の戦争が好きな皇帝は、信仰心ではなく戦争に駆り出すために天神の存在を利用する者もいた。

真に天神を敬っているならば、戦争などむやみに引き起こそうとは思わないはずだ。

華蓮は俺が凱旋した後も、廟堂へのお参りを欠かさない。

私利私欲のためでなく、天への感謝の気持ちを伝えるためだ。

その純真な思いが、宮廷に広まり、皇帝のみならず、皇后を慕う礎(いしずえ)となっていることを、意図せずやっているのだから、天も嬉しいだろう。
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