天帝の花嫁~冷徹皇帝は後宮妃を溺愛するがこじらせている~
(それにしても、亘々遅いな……。もう帰ってきてもいい頃なのだけど。なにかあったのかしら)

 嫌な予感がする。亘々がいなくなってしまったら、私は天涯孤独だ。生きる気力も望みもなくなってしまう。

 亘々がいなくなってしまった後のことを考えるだけで身震いした。そんな怖ろしいことは想像したくもない。

「お嬢様っ!」

 切羽詰まった声と共に、亘々は平屋に飛び込んできた。

「亘々!」

 ようやく帰ってきてくれた亘々を見て、私は声を弾ませた。だが、亘々の真っ青な顔を見て、喜びの笑顔が消えた。

「お嬢様、大変です。早く逃げてください」

 全身に汗をかきながら、息を荒げて亘々は言った。

 嫌な予感は当たったらしい。なにかがあったのだ。

「どうしたの?」

「新皇帝が後宮妃を募って、歳若い美女を臣下たちが探しているそうです。錦衣衛(きんいえい)はすぐそこまで来ています。お嬢様、早く逃げて」

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